柿渋染めとは?
柿渋は、高い防水・防腐・防虫効果を持ち、古くから漁網や醸造用絞り袋、染色用型紙に渋団扇、紙衣、和傘など、あらゆる日用品に用いられていました。また、漢方薬としても用いられ、柿渋がもつタンニンが血圧降下・火傷・二日酔いなどに効くといわれています。
柿渋ってどんな色?
柿渋液の作り方は、柿を未熟な青柿のうちに採取し、粉砕・圧搾した渋液を冷暗所で何年も熟成させます。抽出直後は黄緑色ですが、熟成を重ねるにつれ茶色に変化していきます。そして、出来上がった柿渋液を何回も塗り重ねることで、「柿渋茶」とも言われる灰がかった黄赤色を発色させます。この色は、化学染料にはない独特の風合いで自然がもたらす独特の色合いといえます。
柿渋染めの特徴
●防水・防腐・防虫効果
柿渋は塗り重ねる事によって一種のタンニンの皮膜のようなものを形成します。そしてタンニンは縮合重合する性質があるため、タンニンの皮膜はどんどん丈夫になり防水効果が得られるようになります。昔の番傘に柿渋が塗られていたと聞くとその防水効果は一目瞭然です。
●塗布物を堅牢に
柿渋の成分で忘れてはいけないのがペクチンです。このペクチンは接着性が強く、日本の伝統工芸品である紙漆細工 一閑張り(いっかんばり)などはその性質を利用したものと言えます。縮合重合とともにペクチンは次第に不溶化傾向となり、塗布物は丈夫になります。
●日毎に色味が増す
柿渋染めの最大の特徴は日毎に色味が増す点です。これは、柿渋の主な色素成分であるタンニンが年月とともに縮合重合するためです。ぜひ、使い込むほどに、日を重ねるほどに柿渋茶がより一層深い味わいの色となる様をお楽しみください。
みつる工芸では、毎年自社の柿の木から柿渋作りをおこなっています。これからも、古くより受け継がれた柿渋を現在社会に生かし皆様にお届けしてまいります。
さまざまな用途がある柿渋 〜みつる工芸の豆知識〜
柿渋は、染料のほか古来より柿渋の特性を生かしたさまざまな使い方がされていました。ぜひこの機会に柿渋の魅了を知っていただければと思います。
□ 日本酒の製造工程で…清澄剤(せいちょうざい)として利用
江戸時代以降、日本酒の製造工程で柿渋を塗った酒袋が使用されていました。この酒袋でもろみを搾り、酒の中のいらないものを濾し取っていました。機械で酒が作られるようになった今でも、柿渋は“タンパク質を固める効果”を利用した清澄剤として使われています。
□ 血圧降下・整腸作用等の効果
柿渋は昔から脳卒中の民間療法として、また中国では漢方薬として飲み継がれてきました。そのほか、血圧降下や二日酔い、やけどやしもやけ、打ち身に効くなど様々な説があります。
□ 和紙に塗布し容器をつくる[一閑張り(いっかんばり)]
柿渋を和紙に塗布し、その上に和紙を貼る。この作業を繰り返すことで、一閑張り(いっかんばり)ができます。これは、柿渋の塗布物を丈夫にする効果を利用した民芸品です。古くより農家では、収穫した豆などを入れていたと言われています。
□ 優れた防水効果を活かした染色用型紙
染色用型紙は、柿渋を和紙に何回も何回も塗り重ねたものを彫刻刀で掘って作られます。染色工程において、型紙には糊がつき、それをしっかり落とすために水洗いを行うなどかなり使い倒しますが、型紙がくたびれず、本当に丈夫です。
□ 防虫・防腐効果を活かした建具としての活用
古来より柿渋は、建具など木材に塗布して使われました。近年でもこの防虫・防腐・防水効果が見直され、建材に塗布する業者さんが増えてきたとか。もちろん、木造 築120年のみつる工芸社屋にも塗布されています!
□ そして染色に 〜奥ゆかしい色目を実現〜
みつる工芸では、柿渋は最高品質といわれる南山城地方産のみ(現在の京都府相楽郡、綴喜郡のあたり)を使用しています。柿渋の持つさまざまな良い効果が奥ゆかしい色目とともに実感できるのは、本物の柿渋染めだけなのです。
柿渋めの作り方
ご家庭で出来る柿渋めの作り方を紹介します。
まずは時期。7月後半から8月中ぐらいを目処に作ります。
柿の種類
甘柿よりは渋柿が断然オススメです。有名なのは小粒の「豆柿(まめがき)」ですが、みつる工芸では「天王柿(てんのうがき)」という柿を使います。では実際の写真を交えて。
いい感じに実った柿を収穫します。今年は1本の木からとれる量が多かったように思います。
実はこんなにちいさな柿なんです。
そもそも柿渋とは昔から高級品だった訳ではなく、庶民の間でごく普通に生活に根ざしていたものだったらしいです。定期的に柱に塗ったり、漁師さんの網の強化などに使われたそうです。
採取した柿を軽く水洗いします。
ハンマーなどで軽くつぶします。飛び散るので強めのビニール袋にいれて袋ごとたたき割ります。
さらに細かく砕きます。ミキサーが便利です。ただ、お使い後はミキサーをかなり念入りに洗う必要があります。お手入れをしないと柿渋の成分で固まって使い物にならなくなります。
水分を足して2〜3日ぐらい寝かせます。
ラップをかけておきます。表面が固くなるのを防ぐためです。直射日光もだめです。
その後、ラップをかけて数日間寝かせた物を今回いよいよしぼって液体と搾りかすに分ける作業です。木綿の手ぬぐいが1枚あれば便利です。まずは適量を手ぬぐいの上に広げます。
包み込んで思いっきりしぼります。手ぬぐいを破るぐらいの気持ちで力一杯しぼります。
しぼり終わった濁った緑色の液体は、発酵前の青臭い柿の香りがします。この液体で染めてじっくり日光に当てながら発色させる方法もあります。
後は発酵のために寝かせる準備をすれば一段落です。容器に小分けにすると収納が楽です。漏斗があると便利です。樽のまま冷暗所で寝かせてもOK。
2009年度の柿渋がひとまずは完成です。後は何年寝かすか、状況を見ながら判断します。
ちなみに容器のふたはきちっと閉めないようにしてください。もしくはふたは必要ないぐらいです。この状態でも染色に使えます。タンニンの縮合が進んでないので、色の変化を楽しむならこの状態で使います。